1021年12月 討伐:大江山

冬郷
冬郷

……なぁ昴輝。俺達は朱点童子を倒した。俺達は悲願を達成したんだよな?

昴輝
昴輝

………………………………

冬郷……ショックだろうね。
朱点童子を倒せば万事解決だと信じ込んでいただろうから、さ。

報世
報世

………………どういう事だよ。何で俺達の額に呪いの印が残ってるんだ?

報世
報世

あの醜い鬼を倒せば、鬼退治なんて下らない日々から解放されるんじゃなかったのか……?

夏来
夏来

………………………………

報世
報世

……何だよ夏来。一人平然としていて、随分と余裕そうじゃないか。お前もしかしてこうなる事に気付いていたのか?

夏来
夏来

………………………………

報世
報世

黙ってないで答えろよ夏来っ!!

もう対面を装う余裕すら無い報世。
対する夏来は無言……報世とは極力関わりたく無いのが目に見えて判ります。

夏来
夏来

……朱点童子討伐後に起こる展開の一つとして、最初から想定はしていたよ。ただ、それが確信に変わったのは仁王門を超えた辺りからかな

昴輝
昴輝

え、手がかりになるモノなんてあった?

夏来
夏来

仁王門にしても、あの石碑にしても、中に広がる廃墟にしても、この場所にある全てが異質でしかなかったからね

昴輝
昴輝

異質……別にオレは何も感じなかったけどなぁ

夏来
夏来

地上よりも余程立派な時代不詳の建築物が、地上よりも過酷な環境下で、こんなにも綺麗に残っている事がおかしいんだ。それも、まるで僕達に見せつけるように。……恐らく今の大江京ココは何かしらの意図を持って作られた、言わば『娯楽施設』なんだろう

昴輝
昴輝

娯楽施設? こんな気味が悪くてよく判らない場所が??

夏来
夏来

昴輝の言う通り、僕達には不気味な場所でしかない。でも、立場が違えば娯楽施設になり得る人が居る。僕達の一族が悲願としていた大江山の鬼退治ですら、彼らには余興の一部だった。……恐らく、ね

報世
報世

……何で呪殺の碑前での時あのときに、それを言わなかったんだ?

夏来
夏来

全て詮無きことだったからね。これが茶番だと知っていても、先へ進まざるを得なかったから。それなら知らないままの方が余程いい、と

やっぱり夏来は全部推測していた上で、あえて黙っていたんだ。

それにしても今の夏来にとってはこんな重要な話ですら「詮無きこと」なんだね。
もしも報世との一件が無かったら、今語ったこの話を夏来はそう表現していたのかなぁ。
あの一件が起こる前までは、夏来は報世の事を高く評価していて、信頼していただろうからね……。

冬郷
冬郷

……もしかして雪衣はこの事に気付いていたのか?

夏来
夏来

いえ。雪衣さんは気付いていません。ただ、事情は違ったとしても、それでも結果として雪衣さんの当主判断は一族を守る最良の選択だった……今にして判る事実ですが

冬郷
冬郷

くっ………………………

皮肉な事実、だよなぁ。
そして、雪衣の言動を完全否定していた冬郷に対して最大級の嫌味をぶつける夏来……普段だったら絶対こんな言い方なんてしない筈なのだけれど。
完全に自暴自棄になってます。

雪衣だって、こんな形での汚名返上は望んでいなかったでしょうに。

夏来
夏来

結局、自分を過信したボンクラ共がハズレくじを引いたって話さ。それでも僕達は大江山を……偽物とは言え朱点童子の屍を越えたんだ。大手を振って京へ戻ればいい。……束の間とはいえ、自尊心は満たされるんじゃないかな? ……そうだろう、報世?

報世
報世

……の野郎っ!!!

昴輝
昴輝

二人共落ち着いて! こんな所で喧嘩しても仕方ないんだからさっ!

報世
報世

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夏来
夏来

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冬郷
冬郷

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昴輝
昴輝

………………みんな、ウチに帰ろうよ。ね?

昴輝もこれ以上は言葉が出ないみたいです。
四人全員のメンタル・関係共に四散五裂の大崩壊で、プレイヤーも掛ける言葉が思い浮かびません。

それでは京へ戻りましょう。
降りしきる雪の中、言葉無く帰途に就く四人の心中を考えるとやるせなさすぎます。

大江山帰還後……