1021年9月 討伐:鳥居千万宮


イツ花
イツ花

雪衣様っ! 雪衣様、どうぞお気を確かにっ!!

燈衣
燈衣

ちょっと待ってぇな雪衣サン。いくら体調悪いからって、倒れるの早すぎや。お父達、今さっき出掛けたばかりやないの

雪衣
雪衣

イツ花……燈衣……これでいいのよ……。もう私には……出来る事は無いから……

燈衣
燈衣

アカンて雪衣サン。雪衣サンは三代目当主なんやろ? こないな形で居無くなっていい人やない。今からウチがお父達を追いかければ……

雪衣
雪衣

駄目よ……これ以上は……迷惑をかけたくない……

イツ花
イツ花

雪衣様は迷惑なんて一つも掛けていませんっ! いつも自分よりも周りの人達を大切にして……今朝だって討伐に出掛ける皆さんの為にと、無理を押して朝食に大好物を作って差し上げていたじゃないですか……!

雪衣
雪衣

いいの……全部私が……やりたかっただけだから……

イツ花
イツ花

でもっ! これでは雪衣様が何も報われないじゃないですかっ……! 

雪衣
雪衣

私が……報われない……?

※1020年3月は討伐隊未参加の為、休養

※1020年6月は逢瀬交神で休養

※1020年9月は茜葎交神で休養

※1021年7月以降は討伐隊勇退の為、基本的に休養。

雪衣
雪衣

私の人生は……報われないもの……だったの……?

人生が報われたかどうかの真価はその人生を過ごした本人にしか計り知れないけれど。
それでも、外野から見た雪衣の人生は、正直に言って報われたとは言いがたい内容だったと思います。
(雪衣には失礼な判断かと思いますが)

雪衣
雪衣

私はずっと家族の為に出来る事をしたかった。そして、家族が幸せそうな姿を見る事こそが私にとって一番の幸せなんだと……

誰の責任とかではなく事実だけを述べると、雪衣の人生がこういう形になってしまったのは、雪衣が限りなく利他的な人間だったから。そして、そんな雪衣の心を奪ったのが信武だった事が多いに関連してきます。

雪衣が語った「家族の為に」と言うキーワードは、元々信武時代において「家族がそれぞれやりたい事を見つけ、自分のための人生を選び取る」と言う、信武の指針が元となって形作られたものです。
でもこの指針はあくまで信武の願望から生まれたものでした。
信武が幼い頃に祖父から受けた「仕打ち」を反面教師に、信武だけでなく周囲も自分の中にある世界を広げる事で、もうあんな辛い思いをする人がいなくなるように……延いては自分もあんな思いはもうしたくない、そういった意図があったのです。

信武が整えた環境で雪衣が抱いた願望は「信武の望む事を叶えてあげたい」でした。
これはある意味、信武の祖父である巡流に似たような……信武が一番嫌がるタイプの願望です。
原点回帰とも言える雪衣の願望は信武にとっては想定外であり、それに気付かず「自分に懐いてくれた雪衣にも何か残してあげたい」という一心で当主の指輪を彼女へ渡してしまった事は、彼の人生で一番大きな選択ミスだったんだろうなぁと思う訳です。

雪衣
雪衣

……でも、私が本当に望んでいた幸せは……

雪衣自身が願ったこととは言え「自分の望み」が「自分の幸福」とイコールになるとは限りません。
それが雪衣にとって大きな矛盾となっていきました。
彼女を語る上で外せない出来事である去年の大江山討伐での目前撤退ですが、あれは雪衣の中にある矛盾を大きくフォーカスした内容となります。

あの時一瞬だけ考えてしまった内容こそが、彼女の本当の幸せに直結する感情だった。
そして、直後に出した正反対の結論こそが、彼女が望んだ生き方だった。

この矛盾を生んだ理由は紛れもなく信武の存在です。
正しくは、信武の存在に拘ってしまった雪衣の恋心、と言いますか。
交神直前に見た夢に出てきた雪衣の中で存在している信武が、そうさせてしまったのかなと思います。
(あの時は言い濁していましたが、雪衣の中の信武が現代衣装だったのは「あり得ない幻想」を表現する意図が入っていました)

雪衣
雪衣

私はただ信武さんの為に、信武さんの望んだ未来を実現してあげたかった

勿論、雪衣が自身を蔑ろにしてまでも信武の為に生きることを、信武が望むわけはありません。
もし仮に信武が生きていたのなら、そんな生き方をしようとする雪衣を窘めていた事でしょう。
全て雪衣が自分で作り上げた、自身に対する枷です。

今月の討伐時に「九尾吊りお紺さんと雪衣は似ているところがある」といった発言をしていましたが、雪衣も彼女と同じように自分の作った枷を首に掛けてしまっていたのでしょう。

雪衣
雪衣

それが無意味な行動だって自分でも判っていたけど、それでも止められなかった

雪衣の恋心はプレイヤーが考えるよりも大きく、そして重いものでした。
それでも彼女の心を無理矢理動かそうとした結果が今月までの有様です。
誰も彼女の心を変えることが出来ませんでした。

こんな事をしたって
彼が私のものになるなんて、絶対に無いのに

信武は既に故人です。それに雪衣が生まれる前に自分の「姫さん」を見つけてしまっています。
これはもう、どれだけ雪衣が信武を想っていたとしても、どれだけ信武に尽くし続けても、プレイヤーでさえも変えようがない事実なのです。

そして、雪衣の気持ちを変える手段が見つからなかったのも事実。
ならばそれを黙って飲み込むしか術は無いのでしょう。

……こんな結果はプレイヤーを含めて、誰だって望んではいなかったけれど。

燈衣
燈衣

……雪衣サン、何で笑うてるの?

雪衣
雪衣

……報われなくてもいいわ。だって元々、こうなるしか無かったんだもの

イツ花
イツ花

雪衣様……?

雪衣
雪衣

私、あの日誓ったの。どんなに辛くても、苦しくても、必ずこの想いを全うするって。だから、これでいいのよ。

雪衣
雪衣

この胸の痛みは、私が想いを全うできた証。だから……


昴輝
昴輝

ただいま、イツ花。みんな無事に戻ってきたよっ

冬郷
冬郷

イツ花、雪衣のヤツは大人しく養生していたか? と、言ってもアイツの事だ、全然大人しくなんてしていなかったかもしれんが

イツ花
イツ花

冬郷様……。その、雪衣様は……


冬郷
冬郷

雪衣の馬鹿が……何で俺達が戻るまで待っててくれなかったんだ……

主な戦利品:土祭り、朱ノ首輪(土々呂 震玄 解放)